舌には正しい位置があることをみなさんはご存じでしょうか?
普段、舌がどこにあるのか意識している方は少ないでしょう。
しかし、舌が正しい位置にないと、歯並びをはじめとして、身体に悪影響を及ぼすことも。
今回は、正しい舌の位置の解説、舌の位置と歯並び・健康との関係、舌癖を直すトレーニングの方法などについてご紹介します。
舌の正しい位置はここ!スポットをチェックしてみよう
口の中で正しい舌の位置がわからないため、収まりが悪い経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上顎の前歯の付け根から喉の奥の方に舌を滑らせていくと、わずかにへこんだ部分があることに気づくでしょう。これを「スポット」といいます。このスポットに舌を収めるようにし、舌全体を上顎側にくっつけた状態が正しい位置です。
舌を正しい位置でキープしようとすると、とても疲れるという方もいらっしゃいます。それは、口周りの筋肉が弱っているからかもしれません。
舌の位置をスポットにキープできず、前歯を押し続けてしまったり、下顎側に付けて口を開けたままにしたりする癖を「舌癖(ぜつへき)」と言います。
「よく舌を噛んでしまう」という方は、舌の位置が正しくない可能性があるので、注意が必要です。
舌の位置が正しくないとどんな悪影響がある?
舌を正しい位置にキープできないと舌の筋力は衰え、その結果、体身にさまざまな悪影響をおよぼします。詳しくみていきましょう。
口呼吸になりやすい
舌の筋力が低下すると舌が重力に逆らえなくなり、口が開いた状態になりやすくなります。
その結果、口呼吸の傾向が強まり、呼吸と一緒に空気中に浮遊するウイルスや雑菌などを直接体内に取り込みやすくなってしまいます。
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「口呼吸」と歯並びの密接な関係
食べる力が低下する
舌は食べるときの動きをスムーズにしてくれる役割があります。噛んだ食べ物をひとまとめにし、食べ物を喉に押し込んで飲み込むのを手伝ってくれるのです。
舌の力が低下すると食が細くなり、食欲や体力の低下にも繋がります。
滑舌が悪くなる
アナウンサーやナレーターなど、喋りの仕事に就いている人たちは、滑舌のトレーニングを定期的に行なっています。彼らのように言葉をはっきりと力強く発して人に聞き取ってもらえるようになるためには、滑舌練習による舌の筋力強化が必要不可欠です。
普通の生活を送るのにアナウンサー並みの滑舌強化は必要ないかもしれません。しかし舌の筋力の衰えによって滑舌が著しく悪くなると、発音が聞き取りにくくなるので、周りとのコミュニケーションが難しくなってしまうことも考えられます。
歯並びが悪くなる
前歯をずっと押し続けるような舌癖があると、前歯は徐々に外に向かって動いてしまいます。そのため開咬(奥歯が噛み合っていても、前歯が噛み合わず隙間ができる状態)になる可能性も高いでしょう。
歯列矯正の「後戻り」の原因になる
舌の悪い癖が原因で歯並びが悪くなった場合、歯列矯正を行っても、歯の移動するスピードが遅かったり、せっかく動かした歯の「後戻り」がみられたりすることがあります。
舌で押す力が働き続ける限り、歯並びが乱れてしまう可能性があるからです。
顔のゆがみやたるみが起こる
舌を正しい位置でキープできない原因の1つとして、舌周りの筋肉が弱っていることが挙げられます。
舌周りの筋肉が弱ってしまうと顔の筋肉のバランスが崩れ、顔のゆがみやたるみが起こることも。
正しい舌の位置になるとこんな効果が!
正しい舌の位置になると、さまざまな嬉しい効果があります。
まず舌の位置をキープするために舌周りの筋肉を鍛えることで、首から上の多くの筋肉も同時に鍛えられます。普段使わない筋肉がリフトアップされるので、表情が豊かになるケースも。
同時に顔周りの筋肉が鍛えられることで、小顔効果も期待できます。特に首や顎がシャープになるため、たるみや二重顎に悩んでいる場合は舌を正しい位置に矯正することで改善されるかもしれません。
舌癖を治そう!舌の筋トレ「あいうべ体操」のすすめ
舌癖を治し、舌を本来あるべき位置にキープするためには、「舌の筋トレ」をおすすめします。
ここでは舌の筋トレの一種、「あいうべ体操」をご紹介しましょう。
やり方はとても簡単です。「あ」「い」「う」と口を動かし、最後に「べー」と思い切り舌を出しましょう。これを朝昼晩10回ずつ繰り返します。
子どものときから正しい舌の位置を知って健康を保つため、この「あいうべ体操」は全国の保育園や小学校でも実施されているそうです。
舌を正しい位置にすると疲れる方は舌の筋肉が弱っている可能性があるため、日頃から意識してトレーニングをするようにしてみましょう。
MFT(顎口腔機能訓練)って何?
MFTは後天的に起こった口周りの筋肉の弛緩などを、舌や唇、さらに口や顔の筋肉のトレーニングを通して整えていく療法です。
特に無意識に舌で前歯を押したり食べ物を飲み込む時に舌を出したりする、悪い舌癖の改善などに効果的であるとされています。
MFT(額口腔機能訓練)の効果
MFTを行うことで、舌や口周り(唇、頬など)の筋肉が鍛えられます。口回りを強化すると、舌を正しい位置にキープするのが楽になる効果も。
また食べ物を飲み込むときの正しい方法を学ぶことで習慣にし、舌の悪い癖を改善に導きます。
MFTは10歳ぐらいまでの成長途中の子どもには絶大な効果を発揮します。しかし大人になると顎の骨や筋肉の成長が止まってしまうため、MFTにより舌癖を改善する効果は限定的です。
それでも強い舌癖がある場合は、矯正治療を行っても後戻りしてしまう可能性が高いため、矯正治療と並行してMFTを行うことがあります。
舌癖とともに歯並びを見直そう
舌癖が原因で出っ歯や開咬になってしまった場合は、舌を正しい位置にキープするトレーニングとともに歯列の矯正治療を合わせて実施しましょう。
状況に合わせてMFTも一緒に行うことで良くない舌癖を根本から直し、理想的な口腔内をキープすることが可能です。