上下の歯を噛み合わせた時に、上の歯と下の歯の真ん中(正中線)がぴったりと合わないというケースがあります。中には「一見整った歯並びのように見えるのに、正中線だけが上下でずれている」という人もいるでしょう。
今回は、上下の歯の正中線のずれはなぜ起こるのか、そして、正中線のずれは歯列矯正で治療できるのかについてご紹介したいと思います。
正中線のずれはなぜ起こる?
正常な噛み合わせでは基本的に、上下の歯の真ん中は一致し、歯並びは左右対象になるはずです。正中線がずれている時、次の3つの可能性が考えられます。
歯の「大きさ」が左右で異なる
人の体は原則として左右対称で、右手と左手、右目と左目のように左右のパーツはほぼ同じ大きさです。しかし、中には例外的に左右の同じ歯でも大きさが異なることがあり、このサイズの差により、正中線がずれることがあります。
歯の生え方に問題がある
左右どちらか片側だけに八重歯が生えている場合や、埋伏歯や永久歯の先天性欠如などで生えてこない歯がある場合、歯の本数が左右で異なるため、正中線がずれることがあります。
また、奥歯がずれてきちんと噛み合っていないケース(「交叉咬合(こうさこうごう)」とも呼びます)でも、上下の前歯の中心線が合わなくなります。
あごの骨が左右非対称
あごの骨がゆがんだり曲がったりしている場合、上下左右のバランスが悪くなることがあります。また、遺伝的な原因で左右のあごの成長が異なることもあれば、「頬杖をつく」「片側ばかりで噛む」などのクセが、あごの骨格に影響を与えることも。
あごの骨は、歯が並ぶための大切な土台です。あごの骨が左右非対称になれば当然、その上に生える歯も左右非対称の位置になり、結果、正中線がずれてしまいます。
正中線のずれは治療すべき?
上下で歯の真ん中がぴったりとあうのが理想的な歯並びです。とはいえ、人間の体は機械ではないので、ぴったりと左右対称ということは少なく、若干のズレが生じていることも多いもの。1ミリ、2ミリといったごくわずかなズレで、他に気になる症状もないのであれば、基本的には積極的に治療しなくとも問題にならないでしょう。
ずれがいちじるしい場合は、機能的な問題があるケースも
正中線のずれが大きい場合には、歯の生え方やあごの骨の問題が大きいということです。放置しておくことで、食べ物を十分に噛めない、言葉がきれいに発音できないなどの弊害をもたらす可能性があります。さらに、骨格のずれが大きければ、あごの関節に悪影響をおよぼし「顎関節症」を発症するリスクも。
正中線のずれがいちじるしく、気になる症状がある場合は、治療を検討すべきです。
関連コラム
正中線のずれは歯列矯正で治せるのか
正中線のずれが歯列矯正で治療できるかは、ずれを引き起こしている原因によります。歯の生え方や歯並びの悪さが原因で正中線がずれてしまっている場合には、歯列矯正で歯を移動させることでずれを改善できる可能性があります。
ただし、あごの骨が歪んでいる、曲がっているなど骨格の非対称性が強いケースでは、歯列矯正だけでは治療が難しいこともあります。そんなときは、歯列矯正に先だって、外科的な手段(手術)が必要な場合があることも知っておきましょう。
成長期に行う子どもの歯列矯正なら、あごの骨の発育にもアプローチができる
お子さんの歯の正中線のずれが気になる場合は、早めの段階で専門医の診察を受けておくと、将来的な外科手術を回避できる可能性があります。子どもの歯列矯正では、発達段階にあるあごの骨に対しても働きかけ、左右対称になるよう成長のサポートができるからです。
身長などと同じく、あごの骨が成長する時期はある程度、決まっています。治療すべきベストなタイミングを逃さないよう、早めの段階で一度、歯列矯正の専門医を受診しておくと安心です。