顎が小さいと小顔に見え、かわいい印象があるかもしれません。しかし顎が小さいと体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。場合によっては治療を考えたほうがいいかもしれません。ここでは顎が小さいことによる歯並びへの影響や顎の成長を促す方法などについて解説します。

「顎が小さい」とは

「子どもの顎が小さいかも…」と思ってもかわいらしく感じ、治療した方がいいかも…とまで考える方は多くはないようです。しかし不安を感じるようであれば、歯の定期検診などの際に歯科医に相談して見るといいでしょう。

「顎が小さい」と診断されたのであれば、それは顎が発育不足となっているかもしれません。放置してしまうとこれからの歯並びなどにも影響してくる可能性があるため、早期の対応がおすすめです。

顎が小さいことによる影響とは?歯並びにも影響?

顎が小さい場合、口内はもちろん体全体に影響を及ぼす可能性が考えられます。下顎が小さい場合は舌が収まらないため、歯並びの悪さやイビキ、時によっては姿勢の悪さにまで影響するかもしれません。また上顎が小さい場合は、鼻づまりや鼻炎などといった症状がでる可能性があります。

ここでは、顎が小さいことで生じる可能性のある症状をご紹介します。

歯並びが悪くなる

顎が小さいということは、それだけ歯の並ぶスペースが狭いということです。つまり、本来の位置に歯が生えずることができず、でこぼことした歯並び「叢生(そうせい)」や、上の歯が突出してしまう「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」になる可能性があります。

歯並びが悪いということは噛み合わせが悪いということです。噛み合わせが悪ければ、食べ物をしっかり噛めず喉に詰まらせたりすることもあるでしょう。また、歯磨きのしづらさから虫歯や歯周病などのリスクも高まります。

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口呼吸になりやすい(いびき、無呼吸症候群)

顎が小さければ、舌が正しい位置に収まりません。すると舌で鼻腔を塞いでしまうこととなり、鼻から十分に酸素を取り入れることが困難となります。そのため鼻より口で呼吸する方がラクになり、口呼吸になってしまうのです。

舌が喉の奥に落ち込むと気道が狭くなり、いびきや無呼吸症候群の原因にもなります。睡眠の質はもちろん、集中力や体力の低下を招く恐れもあるので、早めの治療を検討されるといいでしょう。
口をあけている子ども

滑舌が悪くなる

口内が狭いため、舌を自由に動かせるスペースも限られます。明瞭な発音が難しくなり、滑舌などに影響する可能性があります。

話したいことが相手に正確に伝わらず、お友達とのコミュニケーションに支障がでたり、人前で話すことに抵抗を感じるようになるかもしれません。

食事の咀嚼力の低下

顎が小さいと咀嚼力が通常よりも弱くなります。食べ物を噛み砕く力が弱いため、十分に食べ物を分解できず消化不良を起こす可能性が考えられます。

顔のバランスの崩れ

歯がキレイに並ばないと噛み合わせが悪くなり、顔のバランスを崩す恐れがあります。たとえば下顎が十分に発達していない場合、出っ歯になってしまうようなケースです。噛み合わせは、顔などの見た目にも影響してくるのです。

顎の成長のピークは?上顎は10歳ごろには成長が完了

顎は何歳ぐらいまで成長すると思いますか? 実は、上顎と下顎では成長スピードが異なります。上顎は、脳や脊椎など神経系の発達とともに成長するため、7歳から8歳をピークに、10歳ごろまでに完成。

一方、下顎は身長など体の成長とともに大きくなっていくため、12歳から14歳ごろに成長のピークを迎えます。

ピークを迎えるタイミングで成長を促すば、顎を大きくできる可能性も高まります。

顎が小さくなる原因とは

顎が小さくなる原因には、「遺伝的なもの」と「生活環境によるもの」と、大きく2つに分られます。

遺伝的要因

子どもの顎が小さい原因のひとつは、遺伝によるものです。親から子へと遺伝されるものには、身長・顔つき・耳・運動能力などいろいろありますが、なかでも顎の骨の形・大きさ、歯並びには遺伝による影響がでやすいと言われています。

遺伝であっても、治療により顎の骨を広げられる可能性があります。まずは歯科医師に相談してみましょう。
あごが小さくなるのは遺伝的要因も

生活環境要因

食べ物などの生活環境も顎が小さくなる原因となります。昨今、噛む力をあまり使わない柔らかな食べ物が増え、顎をあまり使う必要がなくなってきています。そのため、発育が遅れがちなのです。顎の成長を促進するためには、硬い食べ物を積極的に摂取するようにするといいでしょう。

家庭でできる!顎の成長を促す方法

顎の成長を促す策として、まずは日常生活を見直してみるという方法があります。

食生活の改善

顎が小さくなる原因でご紹介したように、生活環境要因も顎の成長に大きく影響します。ご家庭ですぐに始められるものとしては、硬い食べ物を普段の食生活に取り入れてはいかがでしょう。

噛み応えのある食べ物としては、筋繊維のしっかりしている牛肉や豚肉などの肉類、弾力のあるこんにゃく・いか・たこ・餅といった食品もおすすめです。また、食材を少し大きめにすれば自然と噛む回数も増え、顎や口周りの筋肉を鍛えられます。

鼻呼吸を意識

鼻呼吸は、舌を正しい位置に整え、顎の発達をサポートする役割を担います。顎が小さかったり舌が大きかったりするとどうしても口呼吸になりがちですが、鼻呼吸を意識して行うよう心がけましょう。

正しい姿勢を保つ

姿勢が悪いと顎にも影響を及ぼします。正しい姿勢が取れているかどうかは、お子様ご自身にはわかりにくいため、机とイスの高さを調整したり姿勢が悪くなってきたら教えてあげたりといった、周りの方のサポートが必要です。

食事時も姿勢が崩れがちです。イスにしっかり座れていなかったりテレビを見ながらの食事は、姿勢が崩れ咀嚼力が低下します。また、一緒に食事している家族の姿勢などをお子様は意外と見ているものです。みなさんが正しい姿勢で食事できるよう心がけましょう。
食事する子ども

子どもの顎を大きくするための矯正治療「床矯正」

顎が小さいと、永久歯が生え揃った時に抜歯をして歯列矯正を行う必要が出てくる場合があります。それを回避するため、歯が正しく並ぶようスペースを作るのが「床矯正」です。顎の骨を拡大し成長を促します。

床矯正の装置は取り外し可能なため、食事や歯磨きのときに便利です。ただし1日に14時間以上装着する必要があります。装着時間が短いと計画通りに治療が進まず、思ったような治療結果が得られない場合もあるので、自己管理が大切です。

子どもの床矯正を開始する時期は、歯並びの状況や顎の成長具合によってことなりますが、3歳ごろから開始した方がいいケースもあります。顎の小ささが気になったら、できるだけ早めに矯正歯科に相談するといいでしょう。

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子どもの矯正治療費用と保険

歯の矯正治療は、基本的に健康保険が適用されません。ただし、著しい受け口や出っ歯で顎の手術を併用した矯正治療を必要とする場合や、指定の先天的疾患による不正咬合を治療する場合には健康保険が適応されます。

歯並びや治療によって費用なども異なるため、まずは矯正歯科にて初診の際に相談してみましょう。

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成長期なら顎の大きさのコントロールが可能!まずは矯正歯科医にご相談を

「顎が小さいと、歯がきれいに並ばないのでは?」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、成長期であれば顎の大きさのコントロールが可能です。まずは定期的な歯科健診を受け、顎を大きくする必要があると診断されたら、矯正歯科医にご相談ください。