気がついたらいつも口を開けている。口をしっかり閉じようとすると顎に不自然な皺ができる。もしかしたらそれは、アデノイド顔貌(がんぼう)かもしれません。
今回は、近年子どもに増えているといわれるアデノイド顔貌について、その見分け方や特徴、原因となる習慣や改善方法について解説します。
アデノイドとは
アデノイドとは、鼻の一番奥と喉の間である上咽頭にあるリンパ組織のかたまりのことを指します。
アデノイド肥大って何?子どもに多いの?
アデノイド肥大とはアデノイドが大きくなる状態のことで、2歳ごろから少しずつ大きくなりはじめ6歳ごろにピークを迎えるとされています。
その後は多くの場合が10歳歳ごろまでに自然と小さくなっていきます。
免疫力の低い子どもに多くみられ、大人になるにしたがって免疫力が高くなると、自然に小さくなるケースがほとんど。しかしまれに成長しても肥大化したままの場合があります。
アデノイド顔貌とは
口呼吸が原因でアデノイドが肥大することがあります。それによって変化した顔をアデノイド顔貌といいます。
一般的にアデノイド顔貌はアデノイドが肥大して起こった状態だけでなく、口呼吸が引き起こす顔つきも合わせて指すことが多い言葉です。
アデノイド顔貌の見分け方・特徴は?
アデノイド顔貌の特徴として挙げられるのが、以下のような状態です。
- 「口元が前に出ている」
- 「太っていないのに二重顎になりやすい」
- 「顔の輪郭がはっきりしない」
口を開けていることが増えたり、口元にしまりがなくなったりした場合は、アデノイド顔貌の始まりが疑われます。
アデノイド顔貌の原因は口呼吸?
アデノイドが肥大化する主な原因は「口呼吸」です。
口には鼻毛のようなフィルター機能がないため、口呼吸をすると体内に細菌やウイルスが直接入り込みやすくなります。
細菌やウイルスの中にはのどの腫れを引き起こすものもあり、それらに感染してアデノイドが腫れてしまうことが主な原因だと考えられています。
また口呼吸のために、口をぽかんと開けている状態がつづくと口腔内や口回りの筋肉が鍛えられません。この口元の緩みも原因のひとつです。
アデノイドだとどんな影響が出るの?
では、アデノイドになると身体にどのような影響が出てくるのでしょうか。ここで詳しく見ていきましょう。
風邪やインフルエンザにかかりやすくなる
先述したとおり、アデノイドが肥大すると口呼吸の傾向が強まります。
通常の鼻呼吸のときは、鼻毛がフィルターとなって空気中の有害な細菌やウイルスを除去してくれます。
しかし口呼吸の場合は鼻毛のようなフィルターが存在しないため、風邪やインフルエンザなどの病気にかかりやすくなってしまうのです。
中耳炎などから難聴を引き起こすこともある
アデノイドが肥大すると、耳管(鼻と内耳をつないでいる管)が圧迫されてしまうので、中耳炎などにかかりやすくなり、最悪の場合は難聴を引き起こすこともあります。
睡眠時に無呼吸になりやすい
アデノイドの肥大により、寝ている間に呼吸をしない「睡眠時無呼吸症候群」を発症することがあります。肥大化したアデノイドが気道を圧迫し、呼吸がしにくくなるためです。
睡眠時の無呼吸を放っておくと、疲れが取れにくくなり、生活習慣病を誘発しやすくなってしまうので、注意が必要です。
アデノイド顔貌は矯正で治療できる?
アデノイド顔貌の程度が軽度であれば、矯正治療で改善する可能性があります。
長らく口呼吸が癖になっている場合、それを改善しただけでは、顔貌そのものを変化させるのは難しいものです。口周りを変えるには歯並びを整える必要があります。
歯並び・噛み合わせを改善することで、鼻呼吸をしやすい状態に導き、外見的な問題も同時解決できるのは矯正治療ならではの利点でしょう。
症状が重度の場合にはアデノイドの切除や上下の顎を奥に下げる「顎骨体移動術(がくこつたいいどうじゅつ)」など、外科的な手術が必要になる場合もあります。
まずは一度矯正歯科専門医にご相談ください。
また口呼吸の状態のまま矯正治療を行ってもまれに治療終了後に後戻りしてしまうことがあるので、治療の初期段階で鼻呼吸へ誘導することが重要です。
不正咬合による口呼吸が気になる方は矯正歯科医院へご相談を
不正咬合が原因で口呼吸が習慣化してしまった場合は、まず歯列矯正で噛み合わせの治療をしましょう。
鼻呼吸を促してアデノイドの肥大をおさえれば、さまざまな生活上の不具合も改善できるはずです。