当医院にある蔵書のひとつ「歯科矯正学入門」(福原達郎 著)の表紙には、名門王家・ハプスブルク家の肖像画がのっています。
この一族に共通する外見上の大きな特徴として、下顎が上顎より前に出ている(下顎前突、不正咬合、反対咬合とも)ことがよく知られており、このような特徴を「ハプスブルク家のあご(下唇)」などと呼ぶこともあります。
「ハプスブルク家のあご」の原因は「遺伝」にあった
諸外国の王族とつぎつぎに婚姻関係をむすぶ“政略結婚”をくりかえしたことで、広大な範囲で勢力をほこる礎を築いたハプスブルク家ですが、その中には近親婚もふくまれていました。
勢力拡大とともに下顎の特徴も代々受け継いでいき、ハプスブルク家といえば「受け口」や「しゃくれ顎」といったイメージにつながっていきました。
あのハプスブルク=ロートリンゲン家出身のフランス王妃、マリー・アントワネットもルイ16世との婚姻前に歯列矯正を受けていたという説があります。
顎の形・受け口(しゃくれ)は遺伝する場合が多い
ハプスブルグ家のような近親婚をくりかえさないまでも、顎の特徴というものは遺伝のひとつとして、親子間、兄弟間で非常に似る傾向にあります。
当医院でも、親御様が受診・矯正治療されたあとにそのお子様を診たり、ご兄弟を一緒に診療したり、といった機会が多々ありますが、やはり顎や歯並びは遺伝するものだとたびたび実感いたします。
受け口には、生活習慣(クセ)など後天的なものが原因の場合もありますが、先天的な遺伝が多く見られるのも事実です。
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受け口(しゃくれ)を遺伝させないことはできる?
残念ながら、受け口を遺伝させない方法というのはまだ見つかっていません。ただし、親御さんの受け口が、必ずお子さんに遺伝するというわけでもありません。大切なのは、矯正歯科などの専門機関で、定期的な経過観察を行うことです。
また、お子さんを受け口にさせないためにご家庭でできることは、生活習慣(クセ)に気をつけることです。日常生活のちょっとしたクセでも、歯と顎の成長には非常に大きな影響を与えます。例えば、下顎を突き出すクセなどは、早期になおした方が良いでしょう。
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お子様の受け口・顎のコントロールに使用する装置
お子様にも下顎前突症・受け口の傾向がある場合は、乳歯列期からの治療が可能です。
就寝時に顎の成長を調整する「ムーシールド」や「FKO」などの治療装置を使用します。
ムーシールド
ムーシールドは、おもに乳歯列期の反対咬合(受け口)に使用される矯正装置です。
マウスピースのような形をしており、骨格的な要素が軽微な反対咬合の初期治療に適しています。
特徴は、矯正力をゴムや針金のような一般的な矯正装置に使用されるものから得るのではなく、患者様自身の唇や舌の筋肉の力を利用して矯正をおこないます。
このような装置を総称して「機能的矯正装置」といいます。
主に夜間・就寝時を中心に使用するもので、付けはじめのころは寝ているときに外れてしまうこともありますが、なれてくると朝まで口腔内で効果を発揮します。
FKO(エフカーオー)
FKOも就寝時に使用する矯正装置の一種で、顎の成長をコントロールし、受け口や上顎前突(出っ歯)などの顎のズレを調整します。
マウスピースというよりは入れ歯のような、取り外し可能な形状をしているのが特徴です。
外科的処置をともなう顎変形症を治療する場合
顎変形症とは、両あごの骨のバランスが悪いために、噛み合わせがいちじるしくズレた状態のことです。
外科治療をともなう治療が必要かどうか、お悩みの方はまず当医院「アリビオ矯正歯科クリニック」へご相談ください。
当医院は「自立支援(育成/更生)医療指定機関・顎口腔機能診断施設指定機関」です。
顎変形症に対して、機能面の回復と審美面の改善の観点から、まず患者様のご希望を十分に確認したうえで検査・分析をおこないます。
提携病院口腔外科と綿密な打ち合わせをし、十分なインフォームドコンセントの後、提携病院にて咬み合わせ改善の外科手術をおこなって参ります。
なお、外科的処置をともなう顎変形症の治療には、健康保険が適応されます。
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